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初回公表時期に注意——2026年4月改正 女性活躍推進法で労務担当者が押さえるべき実務とは?

2026年4月の女性活躍推進法改正により、101人以上の企業に新たな情報公表義務が課されました。「うちは対応できているか?」と問われたとき、自信を持って答えられる状態にしておきたいものです。

たとえば3月決算企業の場合、初回公表の期限はおおむね2027年6月末です。準備に必要なデータ収集・定義の整理・データベースへの登録を考えると、少しずつ動き始める必要があります。

本記事では改正の背景説明は最小限に抑え、「自社として何をすべきか・いつまでに何を準備するか」という実務対応にフォーカスして解説します






今回の改正で変わること


  1. まず全体像を把握したうえで、自社の規模に応じた対応を確認しましょう。2026年4月の改正内容は主に以下の5項目です。

#

改正内容

対象企業・概要

1

男女間賃金差異の情報公表拡大

101人以上(301人以上はすでに義務。今回101人以上に拡大)

2

女性管理職比率の情報公表(新設)

101人以上(301人以上は選択制であったのが必須項目へ格上げ。すべての対象企業へ義務化)

3

女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供/職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績の公表

101人以上はいずれか1項目以上、301人以上はいずれも義務

4

えるぼし認定基準の見直し・えるぼしプラス認定の創設

全企業(要件の緩和によってこれまでより取得しやすく)

5

法の基本原則に「女性の健康上の特性への配慮」を明記

全企業(企業への直接義務なし)

なお101名以上、301名以上をカウントする「常時雇用する労働者数」には、正社員だけでなくパートタイムや契約社員・アルバイトなど

・期間の定めなく雇用されている者、または

・1年以上継続して雇用されている(または見込まれる)者

も含まれます。

自社の規模区分を確認する際は注意しましょう。


  1. 男女間賃金差異の情報公表(101人以上に拡大)


男女間賃金差異の情報公表は、2022年7月より301人以上の企業に義務付けられていましたが、今回の改正で101人以上の企業すべてに拡大されました。


計算方法

男女の賃金差異は、以下の3区分それぞれで算出します。

  • 全労働者

  • 正規雇用労働者(正社員)

  • 非正規雇用労働者(パートタイム・有期契約社員・アルバイト)

計算式:女性の平均年間賃金 ÷ 男性の平均年間賃金 × 100(%)

「平均年間賃金」は、直近の事業年度の賃金総額を、当該事業年度に雇用した労働者数(人員数)で除して算出します。結果は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示することが必須です。


実務上の注意点

計算にあたっては以下に留意が必要です。

  • 退職金・通勤手当は賃金から除外して計算する

  • 正社員に出向者が含まれる場合は除外するのが一般的

  • 公表には付記事項として、対象期間(○○事業年度)・正社員・パート有期の定義・除外した賃金項目を記載する必要がある


数値だけで企業イメージを損なわせないよう追加情報の付記を活用

実際に計算してみると想定よりも男女の差異が出てしまい、公表しづらいケースは往々にしてあります。よくある賃金差異の原因として以下が挙げられます。

  • 女性にパート・有期の比率が高く、女性の賃金の全体平均を押し下げている

  • 女性の平均勤続年数が男性より短く、年功的な賃金体系の下で平均賃金を下げている

  • 管理職層に女性が少なく、ポジションの差が賃金差に表れている

このような構造的な背景がある場合であっても数値だけを公表すると「性別で待遇を差別している企業」と誤読されるおそれがあります。厚生労働省のガイドラインでも任意の追加情報公表が推奨されていますが、実務上は「任意」とはいえ、このような数値結果となった背景を具体的に付記しておくことで、必要以上にネガティブなイメージを対外的に与えてしまうリスクを緩和させることができるでしょう。


参考:公表文に盛り込む項目

項目

記載内容のポイント

対象期間

○○事業年度(○年○月〜○年○月)と明記

正社員の定義

出向者を除く等、自社の定義を記載

除外賃金項目

退職金・通勤手当を除く旨を記載

パート有期の定義

契約社員・アルバイト・パートタイムが該当する旨を記載

背景事情(任意)

数値が前年より変化した理由など文脈を添える

取組状況(任意)

格差是正に向けた社内の取り組みを補足する

2.女性管理職比率の情報公表(101人以上に新設/301人以上も要対応)



今回の改正でもっとも影響が大きい項目が、女性管理職比率の情報公表義務の新設です。改正後は101人以上のすべての企業が対象となるだけでなく、すでに301人以上の企業として男女間賃金差異を選択して公表していた企業も、新たにこの項目への対応が必要です。


「管理職」の定義——ここが最大の実務的落とし穴

まず確認したいのが「管理職」の定義です。女性活躍推進法における管理職とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」の合計を指します。

「課長級」に該当するのは、以下のいずれかです。

  • 事業所で通常「課長」と呼ばれている者で、その組織が2係以上または構成員10人以上(課長含む)のものの長

  • 同一事業所において、呼称や構成員にかかわらず、その職務内容・責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし一番下の職階ではないこと)

「課長代理」「課長補佐」は一般的に課長級に該当しません。


特に社内で「マネージャー」「シニアスタッフ」「リーダー」といった独自の職制を採用している企業では、判断の目安として、以下の点を確認してみましょう。

  • 管理する組織体の数(2チーム以上か)

  • 管理するメンバーの数(10名以上か)

  • 組織図上の職位の階層(第2階層以上か)

  • 一定の裁量権をもっているか(人事権、事業判断、予算の決定など)


今後も継続してデータを集計し公表することになるため、社内の管理職の定義については予め初期の段階で決定しておくことで毎年の集計に迷わず、計算も楽になるでしょう。


計算方法

計算式:女性の管理職数 ÷ 管理職数(男女合計) × 100(%)

結果は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示します。


3.初回公表の期限と公表方法


初回公表の期限

初回の公表期限は、「改正法施行後(2026年4月1日以降)に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表する」とされています。

事業年度別の具体例は以下のとおりです。

事業年度の終了

初回公表の目安

2026年4月末(4月決算)

おおむね2026年7月末まで

2026年9月末(9月決算)

おおむね2026年12月末まで

2026年12月末(12月決算)

おおむね2027年3月末まで

2027年3月末(3月決算)

おおむね2027年6月末まで

初回以降は、おおむね年1回以上、最新の数値を公表し続ける必要があります。

初回公表に向けた準備スケジュールの目安

公表期限から逆算して、以下のような準備スケジュールを組んでおくことをおすすめします。

タイミング

実施すること

事業年度終了の1〜2か月前

賃金データ・組織データなどの集計方法を確認し、出せるものからデータ抽出を開始。計算上除外すべき内容の確認と計算式の確立、管理職の社内定義決定

事業年度終了後すぐ

各数値を確定し、数値結果に対する付記事項・背景事情を整理する

次事業年度開始後すみやかに

女性の活躍推進企業データベースのアカウント開設(初回のみ)・登録作業を開始する

次事業年度開始後3か月以内

公表完了


事業年度分のデータ集計には時間を要します。データの保持の仕方によっては手動での抽出や加工も必要でしょう。集計対象期間が終わってから一斉に対応を始めると公表時期に間に合わないおそれもあるので、できる準備は早めに始めておきましょう。



なお、自社HPへの掲載でも法令上問題はないとされていますが、厚生労働省の当該データベースへの掲載が通例であり、国としても推奨するスタンスをとっています。特別な事情がない限り、データベースへの掲載をおすすめします。


4.えるぼし認定基準の見直しとえるぼしプラス認定の創設


えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づき、女性活躍推進に関する状況が優良な企業が申請・取得できる認定制度です。採用・継続就業・労働時間等の働き方・管理職比率・多様なキャリアコースの5つの基準があり、達成した基準数によって1〜3段階目の認定を受けることができます。さらに全基準を満たし一定の要件を充たした場合には、最上位の「プラチナえるぼし」認定が得られます。


えるぼし1段階目の基準緩和——より取得しやすくなりました


今回の改正で、えるぼし1段階目の認定基準が一部緩和されました。従来は「基準を満たさない項目について2年以上連続して実績が改善していること」という条件でしたが、改正後は、単年度の実績を評価している項目(採用・就業継続・労働時間・管理職比率など)について、新たに「直近3事業年度・その前3事業年度・さらにその前3事業年度の各平均値が連続して改善していること」のいずれかに該当していれば要件を満たせるようになりました。

たとえば女性管理職比率が1年だけ一時的に下がったとしても、3事業年度の平均値でみれば改善傾向にある場合には基準を満たすことが可能になります。単年の数字の揺れに振り回されず、認定申請を検討できる機会が広がっています。

えるぼしプラス認定の創設——女性の健康支援が新たな認定基準に


今回の改正で、えるぼし1・2・3段階目およびプラチナえるぼしに「女性の健康支援に関する基準」を追加した「えるぼしプラス」認定が新設されました。えるぼしプラス認定を受けるためには、以下の基準をすべて満たす必要があります。

  • 「女性の健康上の特性に配慮した休暇制度」(必須)に加え、半日・時間単位の年次有給休暇/所定外労働の制限/時差出勤/フレックスタイム制/短時間勤務/在宅労働等のいずれかの制度を設けていること

  • 女性の健康上の特性への配慮に関する方針を示し、制度内容とともに労働者に周知する取組を実施していること

  • 女性の健康上の特性への配慮に関する研修その他の労働者の理解促進のための取組を実施していること

  • 女性の健康上の特性への配慮に関する業務担当者を選任し、労働者からの相談に応じる措置を講じ、周知していること


認定取得を検討するには何から始める?

えるぼし認定を検討する際、5基準のうち現在自社がいくつ達成しているかを確認するところからはじめましょう。1〜2基準のみ達成でこれまでは申請を諦めていた場合、今回の改正で1段階目の要件が緩和されたため申請を検討できる状況になっているかもしれません。

一方で、認定申請には行動計画の届出が前提となります。まだ届出をしていない101〜300人の企業はそちらの整備が先決です。

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定を取得することには、以下のメリットがあります。

  • 認定マークを商品・広告・名刺・求人票等に使用でき、採用ブランディングとして活用できる

  • 公共調達において加点評価を受けられる場合がある

  • 日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を通常よりも低金利で利用できる

  • プラチナえるぼし限定:一般事業主行動計画の策定・届出が免除される


5.基本方針改正により「女性の健康上の特性への配慮」が明確化


2025年6月11日施行の女性活躍推進法にて第2条の基本方針が改正され、「女性の健康上の特性に留意して行われるべき旨」が法律で明確化されました。それに合わせて一般事業主行動計画にも女性の健康支援の取り組みを盛り込むことを促進するために、指針が改正されています。この改正による特段の対応義務は現時点ではありませんが、前項のえるぼしプラス認定を満たす基準の中にこの内容が含まれています。


想定される実務上の疑問


Q:3月決算企業ですが、いつまでに何をすればいいですか?


A:2027年3月末に事業年度が終了する場合、改定後の初回公表期限はおおむね2027年6月末です。今から準備すべきことは、①賃金差異算出に必要な賃金台帳データの集計方法の確認、②管理職の定義を自社職制に照らした確認、③女性の活躍推進企業データベースのアカウント開設です。データベースのアカウント開設は手間がかかる場合もあるため、早めに着手することをおすすめします。


Q:計算したら数値が悪かった場合、公表しなければいけませんか?


A:義務である以上、公表は必要です。ただし、数値が悪い背景事情を付記事項として添えることで、単純な差別との誤読を防ぐことができます。「現在女性管理職候補の育成に取り組んでいる」「女性の新卒採用を強化した結果、若年女性労働者が増え平均賃金が下がった」といった取組状況や背景を補足情報として記載できます。状況にもよりますが数値だけを出すよりも、文脈を添えた公表のほうが企業の実情を示すことにもつながります。


Q:行動計画の数値目標は何を書けばいいですか?


A:今回の改正から、男女間賃金差異と女性管理職比率それぞれについて数値目標を行動計画に盛り込むことが必要になりました。「○○年度までに女性管理職比率を○%にする」というように、具体的な数値と期限を記載します。現状値が低い場合でも、「業界平均水準を目指す」という目標設定も一つの方法です。なお、設定した数値目標は対外公表されるものであるため、達成見込みのない過大な目標を設定することは避け、現実的な計画期間・取組内容とセットで設定することが重要です。


Q:301人以上の企業ですが、これまでの対応で何が変わりますか?


A:主な変更点は2つです。①これまで公表していた男女間賃金差異に加えて、今回から女性管理職比率の公表が新たに必要になりました。②行動計画の数値目標についても、賃金差異・女性管理職比率それぞれに関連する目標を設定する必要があります。また情報公表の項目数要件が4項目以上に変わっており、従来の公表内容が要件を満たしているか改めて確認することをおすすめします。


まとめ


今回の改正で、101人以上の企業にとって「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の情報公表が新たな義務となりました。数値の計算方法・除外項目・付記事項の整備といった実務準備には一定の時間がかかります。特に初めて対応する企業は、データ収集から公表まで想定以上に手間がかかるケースも多くあります。

初回公表の期限は自社の事業年度次第で既に迫っているケースもあります。まず本記事で確認した「管理職の定義」「計算方法」「公表期限」の3点から、自社の対応状況を点検することからはじめてみてください。




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