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スポットワークの労務上の留意点とは?【前半】

昨今、顧問先の皆様の中でも「スポットワーク」を活用している企業は増えている印象です。昨今の人手不足の中、「スキマバイト」を仲介するサービスも増え、自社でもスポットワークの活用を検討している企業も多いのではないでしょうか。


2025年7月には厚生労働省より「いわゆる「スポットワーク」を利用する労働者の労働条件の確保等について」といった通達がでたり下図のスポットワークの労務管理のリーフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512297.pdf

もでています。

今回はスポットワークの労務上の留意点をまとめ、解説します。


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  1. スポットワークとは?



スポットワークとは、法律上その定義があるわけではありませんが、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結するもので、下記のような特徴があることが多くなっています。


数時間から1日以内での雇用形態

②スポットワークの仲介事業者のアプリ等を経由して企業側の求人に面接等を経ることなく先着順で就労が決定


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厚生労働省の資料をもとに寺島戦略社会保険労務士事務所 策定


  1. スポットワーカーも労働基準法等が適用される労働者である


スポットワーカーはその都度企業が必要な時に求人募集し、短期間で面接等がなくマッチングするような通常の正社員等との採用プロセスと大幅に異なるため企業側としてはそのスポットワーカーの雇用形態の立て付けが曖昧になることがあるかもしれませんが、法律上の立て付けは、正社員等と同じく「労働基準法等の労働法(下記のような法律)が適用される労働者」であることには変わり有りません。(ひいては正社員等と同じく企業の就業規則等を守っていただく義務があるということにもなります。)


寺島戦略社会保険労務士事務所 策定
寺島戦略社会保険労務士事務所 策定

  1. スポットワーカーの労働契約の成立時期 依頼キャンセルは休業手当が必要となる可能性大


    労働契約法という法律によって、労働契約は、労働者が事業主に使用されて労働し、事業主がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び事業主が合意することによって成立するとされています。

    一般的な正社員等の労働契約の成立時期について内定が成立した後はその内定取り消しには慎重な判断が必要という認識はかなり広まってきていますが、一方でスポットワーカーの場合、「やっぱりこの日はスポットワーカーに任せる必要はなくなったから稼働キャンセル」ということができるのかという点について、通常の正社員等と同様、スポットワーカーの応募があった時点でいわば内定成立と考えられる旨が2025年7月の厚労省の通達で示されました。

    寺島戦略社会保険労務士事務所 策定
    寺島戦略社会保険労務士事務所 策定


  2. 休業手当が必要となる場合とは


前述のとおりスポットワーカーが応募して、就労が決まった以降に、「やっぱりキャンセル」とする場合、すでに労働契約は成立しているため、事業主の都合で当該稼働日について丸1日の休業または仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるので、スポットワーカーに対し、所定支払日までに休業手当を支払う必要があります。

休業手当とは労働基準法に記載があり「使用者の責に帰すべき事由」により休業させた場合に労働者へ平均賃金の6割の手当を支給する必要があるというものです。そもそもその休業が「使用者の責に帰すべき事由」といえるものなのかどうか、が実務上のポイントになります。


【使用者の責に帰すべき事由の判断基準とは】

使用者の責に帰すべき事由とは、企業の経営者として不可抗力を主張し得ないすべての場合とされています。

ここでいう不可抗力とは、

1.その原因が事業の外部より発生した事故であること

2.事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

の2つの要件を満たすものとされています。


これだけですとわかりにくいですが、ざっくり言えば災害によって店舗や事業所が直接的な被害がありそれが理由で休業せざるを得ないような場合に使用者の責に帰すべきとは考えられないものの、一般的によくある理由で「結局人員が足りたからスキマバイト不要になった」のようなものは経営上の都合にほかならず基本休業手当が必要と考えていただければと思います。


  1. スポットワーカーの休業手当の計算式

休業手当の計算はどうやって行うのでしょうか。


原則は休業期間初日の賃金締め切り日からさかのぼる3か月間の賃金総額をその期間の総暦日数で割ったものに60%をかけたものが1日当たりの休業手当となります。


ただ、スポットワーカーの場合、これまで3か月も勤務実績がないということも多いのではないでしょうか。むしろ初めての稼働日に結局依頼キャンセルせざるを得ないということも当社の顧問先でも起こっています。


この場合どうやって計算すればよいのでしょうか。

この場合下図の通り計算をおこなっていきます。


寺島戦略社会保険労務士事務所策定
寺島戦略社会保険労務士事務所策定

まとめますと、

①もしスキマバイトの方がこれまで自社で稼働実績があれば1か月間に支払われた賃金総額÷総労働日数×73/100となります。

③スキマバイトの方がこれまで自社で稼働実績がないものの当該スキマバイトの方と同じ業務を行う労働者がいる場合にはその方の賃金総額÷総労働日数×73/100をします。

③同じ業務をおこなう同種労働者もいないような場合は、最終算出方法として

予め決めていた日給に73/100×60%した金額(上図の具体例だと4380円)を支給します。


平均賃金一つとってもなかなか奥深いスキマバイト。まだまだ法律がスポットワーカーの労務管理という点で追いついていないところが多い印象を持ちます。今後もう少し具体的スポットワーカーについての諸ルールが通達等で出てくる可能性もあるかと考えており、今後の国の動きにも引き続き注意が必要です!




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