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もう周知しましたか?企業において子ども・子育て支援金制度で必要な実務とは?

子ども・子育て支援金制度は、令和8年度から少子化対策の財源を確保するために設けられる新しい仕組みです。企業の人事労務担当者は給与計算への反映、会社負担の把握、従業員への説明など、実務上確認しておきたい点がいくつかあります。

本記事では、子ども・子育て支援金制度について、企業実務の観点から押さえておきたいポイントを整理して解説します。



  1. 子ども・子育て支援金制度とは何か


    子ども・子育て支援金は、こども未来戦略「加速化プラン」に基づく給付拡充を支える財源として創設される制度です。すでに企業が負担・納付している「子ども・子育て拠出金(旧児童手当拠出金)とは名前は似ていますが、似て非なる制度のため注意が必要です!


    支援金という名称から、国から国民に対してなんらかの金銭が給付される??といった仕組みのような誤解を生みやすいですが、本制度は少子化対策の財源として、「医療保険の加入者であれば原則として全員が課される徴収金」の制度です。


    制度自体は国の施策ですが、徴収の仕組み上、介護保険料と同様既存の医療保険料に上乗せする形で支援金が徴収されることになります。


    そのため、企業においては、自社の健康保険の被保険者については、給与から天引き徴収し、一括して納付を行う形式となり、企業側が徴収実務を担うということになります。


    厚労省資料では、加速化プランの財源のうち、支援金制度による部分は令和8年度0.6兆円、令和9年度0.8兆円、令和10年度1.0兆円の確保を掲げています。国が令和10年に支援納付金最大規模をすでに決めているため健康保険料等のように上がり続ける性質のものではないといわれており、被用者保険加入の場合、令和8年度の支援金率は一律で0.23%ですが令和10年には0.4%まで上がり、そのあとは固定料率になることが予想されています。

    【子ども・子育て支援金を財源とする施策】

    ・児童手当の拡充

    ・こども誰でも登園制度

    ・妊婦のための支援給付

    ・(雇用保険)出生後休業支援給付と育児時短就業給付

    ・国民年金第一号被保険者の育児期間に係る保険料免除(令和8年10月施行)


  2. 企業が労務実務で押さえるべき3つの側面


この制度により、労務実務で直接影響を受けるのは、端的にいえば「給与控除」「会社負担」「従業員対応」の3つです。


  • 第一に、給与控除です。社会保険被保険者については、支援金が医療保険料に上乗せされて徴収されるため、企業は給与計算にて新たな控除項目として取り込む必要があります。また、給与だけでなく賞与からも拠出されるため、賞与計算時も注意が必要です。


    産前産後休業・育児休業中の被保険者の場合は、健康保険料・厚生年金保険料と同様に支援金も免除となります。令和8年4月分の社会保険料より徴収が開始されるので、会社の控除スケジュールに合わせて天引きを実施します。給与明細において子ども子育て支援金を1控除項目として独立して表示させる義務はありませんが、表示させることが望ましいとされます。明細表示の有無は現在会社で利用している給与計算ツールの仕様に沿って対応すれば基本は事足りるでしょう。


  • 第二に、会社負担です。子ども・子育て支援金制度は国が一律の支援金率を決定し、社会保険に加入している場合は協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などを通じて健康保険料、介護保険料と合わせて徴収されます。支援金は健康保険料等と同様に労使折半となります。つまり、従業員本人の手取りへの影響だけではなく、企業の法定福利費の増加としても捉えておく必要があります。労務内にとどめるだけでなく、経理にも情報を展開し実務上の連携について確認を取っておきましょう。


  • 第三に、従業員対応です。子ども・子育て支援金は国の制度ではありますが、従業員からは「春から給与の手取りが減るのでは?」と懸念を示されるおそれがあります。また、当支援金制度は「現在の現役世代が高齢者となったときに社会を支える子ども世代を社会みんなで育てていく」という趣旨を踏まえ、独身の人、子どもがいない人も等しく徴収されるものです。しかし、その制度名から子育て世帯のための制度のように捉えられてしまう可能性もあります。会社が当制度を詳しく説明する義務まではありませんが、本支援金制度によって従業員の控除内訳が変わること、控除対象は全員であることを遅くとも支援金が控除される給与明細が出る前にはアナウンスするのが望ましいです。


◆周知文に盛り込んでおくと良い項目

#

項目

詳細

1

徴収開始時期

自社の給与支払い日ベースでいつから徴収が始まるのかを明記しておくとトラブル防止となります。

2

対象者

年齢、国籍、独身・既婚、お子さんの有無を問わず、健康保険の被保険者は対象ということを明示しておきましょう。

3

負担料率

2026年度は0.23%で自己負担は0.115%ということを示しておきましょう。

4

負担金額イメージ表

・標準報酬月額ごとに具体的な負担額イメージを記載すると、従業員も負担金額を事前に把握でき、徴収開始の際にもスムーズかと考えます。

5

その他重要事項

・賞与からも徴収対象になることや、産前産後休業・育児休業中等の社会保険料免除期間の取扱いなどを説明しておくと良いでしょう。



  • 【周知文イメージ:寺島戦略社会保険労務士事務所 策定】


3.「実質負担ゼロ」とはどういう意味か?



  • 子ども・子育て支援金制度は「実質負担ゼロ」という説明がされることがあります。しかしこれは「支援金を払わなくてよい」という意味ではありません。支援金による新たな負担が生じる一方で、社会保障の歳出改革などによる社会保険負担軽減の範囲内で制度を運用することが法定で定められており、それを指しています。実務上もこの点は従業員に誤解されやすいうえ、実際は加入する被用者保険が決定する健康保険料率で手取りがどの程度変わるのかは異なるため、新たな徴収はあるが、政府としては他の改革効果とあわせて負担増を抑える方針である説明するのが無難です。


まとめ


子ども・子育て支援金制度は国の制度として子どもや子育て世帯を社会全体で応援する仕組みですが、目下の実務として従業員の手取り賃金に影響がある重要な制度でもあるため、実務担当者は理解を深めた上で従業員の対応にあたる必要があります。自社で必要な対応を整理し、給与計算・経理などの関係部門との連携・従業員対応を徴収開始前から進めておくことで社内混乱を未然に防ぐことができるでしょう。




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