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従業員代表、適当に選んでいませんか?従業員代表の選出に伴うリスクは大きいことを理解しておきましょう。


労務の深淵・・・というところにふさわしく、労務の実務の現場において、誤解を恐れずに言えば・・・「重要なのに意外と適当に選ばれている」印象がある従業員代表の選出について述べていきたいと思います。


  1. 従業員代表とは?


従業員代表は、過半数代表者、労働者代表 といったような呼び方をされていることがありますが、「時間外労働・休日労働に関する協定」(36協定)などの労使協定の締結当事者となったり、就業規則を改定する際の意見書に意見を記載いただいたりと、労務実務のなかでは重要なシーンで都度登場が必要な方です。


(厚生労働省の従業員代表のリーフレット)https://jsite.mhlw.go.jp/nara-roudoukyoku/var/rev0/0111/0500/kahansuudaihyou.pdf


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このリーフレットにも記載がありますが、従業員代表には「労働基準法上の管理監督者」はなれません。


また、選出プロセスとしては、労働基準法施行規則に「法に規程する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること」と記載があります。(下記の赤〇部分です。手書きでいびつになっております。。)かつ、過半数がその人を選任していることが明確になる手続きが必要となります。

(上記厚生労働省リーフレット2枚目より抜粋)
(上記厚生労働省リーフレット2枚目より抜粋)

  1. 従業員代表が適切に選ばれていない場合労使協定自体の効力が否定される可能性。


一方で、当社でもいろいろな企業の労務DD等を行っているなかで、労務実務上そもそも全社MTGや全社朝礼のようなところで、

「○○さんが従業員代表の候補になりますので、○○さんの選任に賛成の方は拍手!」のような温度感で選出されているところもまだまだあるような印象を持っています。


「よろしければ拍手!」というところは確かに過半数が明らかに拍手しているのであれば、民主的なプロセスであるとは言えますが、とはいえ、やはり過半数が賛成しているという客観的事実が「記録」として残らないと、後日「従業員代表が適当に選ばれている!」といった主張がなされるリスクがあるといつも考えています。


実際に、従業員代表(過半数代表者)の適格性が認められず、36協定が無効と判断された判例はいくつも存在します。(代表的なものでいえばトーコロ事件(最判平成13年6月22日))


労使協定の中でも36協定は労働基準法マターの最重要なものといってもよく、みなさん時間外の上限等はかなり厳格に意識されて運用されているものの、肝心の従業員代表の選出はあまり厳格に行われていないことが多いように思います。


36協定の効力が及ばないということは恐ろしいことです・・・。

このように従業員代表というのは、かなり実務では軽視できないというところなのです。



  1. 従業員代表を適切に選ぶには?



先ほどの全社MTGの例でいえば、少なくとも過半数の方が拍手をしている全社MTGの様子を映像を残しておくであるとか、それが仰々しいのであればGoogleフォーム等でもいいのでやはり信任・不信任を明確していただく文書を回収するであるとか、社内チャットツール上等であってもいいので文面に残しておくほうがやはり安心と考えています。


また、上述の労働基準法施行規則「法に規程する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること」も実はできていないところが多い印象をもっています。つまり、従業員代表に具体的な職務を伝えずに選出してしまっているということです。


「36協定の捺印のために選びます」というように、従業員代表が必要な都度、その目的をお伝えして選出できていればよいですが、実務では一人の従業員代表を選出したあと、1年、下手したらその方が退職するまで諸々の従業員代表実務を行うことは多いのではないでしょうか。


この場合選出時にまとめてその方が行い得る職務を明示しておくことが労働基準法施行規則上の文面からも適切と考えております。


このような点から、口頭で選出するというよりは、すべて文書で下記のようなフォーム(寺島戦略社会保険労務士事務所で展開しているフォームの一部)を展開するイメージで信任・不信任を明確にして選出していただくことがコンプライアンスに則った労務実務という意味では最も適切と考えています。

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