偽装請負って?業務委託者・フリーランス活用のチェックポイントとは
- 寺島戦略社会保険労務士事務所
- 7月8日
- 読了時間: 5分
業務委託者を活用する企業は増えており、そうした動きに伴いフリーランス新法が施行されたりとフリーランス保護施策は年々強まっている印象です。
ただ「偽装請負」といったリスクもあり、業務委託者・フリーランスの活用には留意すべきポイントがあります。

業務委託とは?
意外かもしれませんが「業務委託」とは、実は法律上の用語ではありません。ただ民法上には請負契約と準委任契約というものがありこの2つの契約の総称として業務委託契約と呼ぶことが実務上多くなっています。
① 請負契約とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束する契約形態です。一般にデザイナーなどが成果物をクライアントに納品するような業務がこちらの請負契約にあたります。
② 準委任契約とは、請負契約とは異なり、仕事の完成ではなく、一定の業務を行うことを約束する契約形態です。コンサルタントとのコンサルティング契約などはこちらの準委任契約にあたることが多いです。
業務委託契約は、正社員や契約社員、アルバイトといった雇用契約とは立て付けが異なります。業務委託契約と雇用契約の大きな違いを構成する要素として「仕事の進め方への命令権(指揮命令権)の有無」があります。
正社員や契約社員、パート・アルバイトといった「雇用契約」の場合、会社には指揮命令権があり、業務遂行の手段を指定できたり、勤務場所や労働時間が指定できるなどの拘束性があります。また自社の就業ルールを守らせたりすることも可能です。
一方で、業務委託契約は一知の成果物の完成や業務の遂行を約束することで発注者から報酬をもらうという契約であり、指揮命令権や勤務時間・労働時間の拘束等は通常及びません。
偽装請負とは?
偽装請負とは、偽装派遣、偽装委託とも言われることがあります。
使われる文脈によって若干の違いはありますが、業務委託の文脈でいえば、「業務委託契約を締結したフリーランスが実質的に自社の労働者と変わらない働き方をしている場合の状態」を言います。
業務委託者は、労働者のように社会保険・雇用保険の加入や労災加入等の必要はなく、さらに労働基準法や最低賃金法なども適用されません。
また、現在の日本の労働法、判例法理等のもとにおいては、通常雇い入れた労働者について、労働契約を解消することや解雇はその要件は厳しくなっている一方、業務委託者については労働者のような契約解消の厳しい規制などはありません。このようなメリットを享受するために、実態は労働者であるのに、業務委託者として取り扱う問題を偽装請負と呼びます。
偽装請負とならないために下記をチェック!
CHECK!1 専属性が高くないか?労働者と同じような160時間近くの稼働となっていないか?
「稼働予定時間月160時間」のように、労働者と同じような拘束性のある稼働が生じていると、労働者性は高くなります。
このように1社での拘束性が高いと、他社から業務を受けるということが実質的に難しくなり、専属性が高まってしまうためです。
また、「始業・終業の時間」のように拘束性のある稼働時間体系をとっている場合や稼働場所が「本社オフィスに限る」といった拘束性がある場合も、要注意です。
逆に言えば、これらの専属性・拘束性を緩めることで労働者性を下げることができ、偽装請負としてみなされるリスクもなくなります。
CHECK!2 全社会議、全社MTGなどの参加が義務付けられていないか?
こちらも拘束性や専属性といった観点から、 全社会議や全社ミーティングといったような、通常社員が出席してしかるべき会議に業務委託者も出席させるといったことは適切ではありません。
情報共有の観点から良かれと思って業務委託者にも出席を命じてしまった、といった話をよく伺いますが、こうした事実によって社員との線引きがあいまいとなり、やはり拘束性や専属性が高まってしまいます。
情報共有が必要といった理由もあり会議に出てもらうことはもちろんあると考えますが、出席が必要な会議とそうでない会議を明確にし、線引きを作ることが重要です。
CHECK!3 会社がPC端末などの業務使用品を渡していないか?
会社と業務委託者はお互いが対等である必要があります。
従業員に貸与しているPC を業務委託者にも貸与するといったことはやはり専属性を高めることにつながってしまいます。PCに限らず、会議室などといった共用部分についても注意が必要です。
よく情報セキュリティの問題から企業がフリーランス等にPCを貸与するというのは聞くところですし、それのみで偽装請負になるわけではありませんが、とにかくなんでもかんでも委託側である企業が貸与するというのは不要に偽装請負リスクを高めることを認識しておき、自前でご用意できるものは基本は自前でご用意いただくことが安心です。
CHECK!4 時給制になっていないか?
労働者であれば時間に対して報酬が支払われますが、請負や委任であれば、成果物や処理した業務の内容に応じて報酬が支払われることが適切です。
とはいえ、こちらもエンジニア界隈等では時間単価で報酬を払う体系も一般的であり、時給制のみで偽装請負認定されるわけではありませんが、ある程度依頼業務に必要な稼働時間の見込みがたつようであれば、月額等で設定しておくほうが労働者性が客観的に見ても薄まり、リスクは低くなると考えます。